はじめてのマウイ(その9)

オアフのホノルル空港に比べたら、マウイのカフルイ空港などは田舎もいいところなので、これといって変哲の無い道をしばらく走っていたら、なんのことはない、ほんの1,2分走ったところでもうレンタカー会社についてしまった。他のレンタカー会社の事務所も、ほとんど大差ない場所に位置しているので、これなら頻繁にバスが走っているのも頷ける。ほとんど巡回と言っていい。

随分近いんだなと細君と話しながら、いざ車をもらいに行こうと事務所前で降りたら、窓ガラス越しにたくさんの人が並んでいるのが見えた。入口に入ると、銀行のキャッシュコーナーのように順番に並ばせるためのロープが貼ってあり、窓口には何人もの係員がいる。こっちはすでに予約は完了しているわけだから、その券を渡して、キーをもらえればいいだけのはずなのだが、さてたくさんある窓口にはそれぞれ担当があるようで確実に空いていると思われる正面右手のコーナーは何かしら、別の業務をやっているようではある。もし日本なら、手の空いてる人を見つけて、適当にやってもらおうと思うのだが、どうしても言葉に自信がないために気が引けてしまう。そもそも、それを見せれば確実に車が手に入るという確信もそのときにはなかったので、どうしようかと思ったが、ふとみるとその長い列の2組ほど前に、先ほど予約をしていた2人組の女性が並んでいる。『あれ〜、やっぱりここに並ばないといけないのかな?でもこの二人もわかってるんだがどうだか怪しいもんなぁ』とも思ったが、あえて危険を犯してまで先を急ぐ理由も無かったため、その列に並ぶことにした。細君は『それ誰かに渡して鍵もらえばそれでいいんじゃないのぉ?』と責めてきたが、『でもさっきの女性もそこに並んでるぞ』とだしに使って、その場を誤魔化した。

しばらく並んで見ていると、さっき自分たちがしていたような事を、順番にやっている。おいおい、それを並んで待つのかよと自分でも正直思ってはいたのだが、全てにおいてこのときは消極的になっていたため、おとなしく並んで待っていた。列そのものは長かったが、たいていは家族連れやカップルだったため、実際は5組くらいだったのかとも思う。先ほど自分たちが予約したブースは、係員が一人しかいなかったのだが、そこの事務所では5人くらいがそれぞれ順番に受け付けていたので、それほど待ち時間は長くなく、せいぜい10分くらいだったと思う。だけど、すでに予約を済ませてきた自分たちが、これから予約する人たちよりも車の引渡しが遅くなるというのはどう考えても変だよな〜。
もっともそこまで頭は回っていなかったというよりもすでに気持ちはちゃんと運転できるかな?という方に向いていたので、それほど待っている時間は苦痛ではなかったというのもある。ほどなくして自分の順番が来て、窓口に先ほど予約したカードを見せると女性の係員は、それを見るなりキーを持ってきて手渡した。まあ、そんなもんだよね。

ところで、待ってる間に細君は興味があったのか退屈だったのか、先ほど言われたE−9という車を事務所の前にある駐車場に見に行っていた。ちなみにここの駐車場は日本の地方のレンタカー屋さんほど狭くない。かなりの台数が止まっていた。ただそれでも予約をしていかないと、いきなりでは乗れないことがあるようだ。細君が戻ってきた時分くらいにちょうどキーをもらったので、すぐに案内させると結構きれいだよーとちょっと嬉しそうではあった。

事務所からはすぐ近くの場所だったのでその車はすぐにわかったが、たしかにメタリック系の綺麗な新車ではあった。日本ではほとんど見た事がないようなフロントマスクだったので、アメリカ仕様のカローラはカッコいいんだなとか思っていたが、それよりもまずちゃんと運転できるかどうかが心配だったので、とりあえず乗り込んで、キャビンを確認しようと思ったら、さっそく運転席と助手席を間違えた。
細君は笑っていたが、こちらは飛行機に乗る前は、自分の車を運転してわけだから、やはりちょっと錯覚に陥ってしまう。ところで今回マウイで車を運転するにあたり心配していたことが二つある。ひとつは慣れない車での初めての右側通行、左ハンドル、もうひとつは、やはり今までしたことのないセルフの給油だ。

乗り込んでガソリンが満タンであることは確認したが、燃費がどれくらいかは実際に走ってみないことにはわからない。カローラならそれほど燃費は悪くないはずだから、ホテルに着く前に無くなるなんてことはないとは思っていたが、予定では2日目か3日目にハレアカラという富士山級の山を登るつもりでいたので、途中給油をしないとも限らないと考えていた。
そこで給油タンクレバーをちょっと探してみたのだが、国産車ではよくある運転席側のトランクルームを開けるレバーの近くには無かった。そのときはおかしいなと思ったが、まあすぐに給油の必要があるわけでもなし、それよりも行方不明のトランクのことが気にかかる。その他の計器はスピードメーターがマイル表示(確かkmも小さく書いてあったと思うが)になっているくらいで、特に目新しいものも無かったので、とりあえずウィンカーとワイパーが日本車と逆になっていることと、今は無きトランクが戻ってきた時に、ちゃんと後のトランクスペースに納まりそうかを確認して、実際に運転してみることにした。
実は私は古い国産車に乗っていたため、このときの車が今ではごく当たり前のキーレスエントリーになっているのにちょっと感動した。そしてそのときはアメリカのカローラもなかなかやるなと思っていた。