はじめてのマウイ(その5)


いっこうに気持ちは晴れないまま、一抹の不安を抱えたままというよりも、
時差ぼけも手伝ってか虚ろな状態で、それでもレンタカープランのため、
自分で車を運転してホテルまで行かねばならぬ。その女性職員は
紛失届に記入が済んだ段階で、一仕事終えたような顔つきになってるので
こちらとしてもそれを信じる他は無く、頭からはトランクのことが
離れないまま、レンタカーを借りに行くことにした。

別れ際に日本でだったら、「それではよろしくお願いします」とか言っていた
だろうが、そんな英語は思い浮かばない。動揺していたせいもあるが、
女性職員が何か言ったのを受けて「サンキュー」とか応えてその場を終えた
気がする。

しかし、その場をすぐに離れたわけではない。
実際、紛失届を出した後もしばらくはショック状態で、未練がましく
ベルトコンベアーの方を見ていたりした。細君も同様で、なんとも
淋しいマウイの始まりになってしまった。
こういうときに責められるのは、たいてい旦那の不甲斐なさである。
そして、携帯電話の件に話が及ぶと、段々感情的になってくるのが
わかったので、『ここにいてもしょうがない、誰か日本語が出来る人に
相談するしかないから、早めにホテルに入って日本人デスクに相談しよう』
と言ってその場を切り抜けた。やれやれ。。。

空港を出るとすぐ右手にいくつかのレンタカー会社のブースが並んでいる。
先ほど話を聞いたH.I.Sのおじさんは、トランクを受け取ったら
レンタカー会社のバスに乗って営業所へ行けと言っていたし、確か
ガイドブックにもそのようなことが書いてあった。
ただそこで手続が出来るのなら、その方が早いだろうと言うことで、
そこで先に手続することにした。だが本当のところは、どのバスに乗って
いっていいのか、よくわからなかったというのもある。

レンタカーはツアーを予約する時にすでに申し込んであったので、
どのバスかというのは、そのバスに書いてある名前を見れば
すぐわかるのだが、その会社も含め、他のレンタカー会社のバスも
思った以上に頻繁に走っている。『ひょっとしていろいろ行き先あるのか?
下手に乗ってしまって、どっか変なところへ連れていかれたら大変だぞ、
何せ英語でまともなコミュニケーションが出来ないんだから』
という不安があったのだ。もうこの時点で完璧に意気消沈しているので、
『とりあえず行ってみるか』という、いつものいい加減さは身を潜めていた。

予約していたレンタカーはハーツレンタカーだった。並んでいたブースでは
一番空港から遠い位置にあった。そのブースでは先に2組くらいが
並んでいて、係員が一人で対応していたから、バスに乗ってっちゃった
方がいいんじゃない?とカミサンは言っていたのだが、前に並んでいる
若い女性の2人組が見るからに日本人ぽかったので、予約の際の様子を
伺ってれば、参考になるかなという姑息な考えもあり、あえてそこに
並んでいた、というより細君を並ばせておいて喫煙所に煙草を吸いに
行ったりしていた。