はじめてのマウイ(その27)

 細君と相談するまでもない。これはもうこのまま乗って帰るしかないなということで意見が一致した。駅で何組か降りる人たちもあったがおそらく計算があってのことだろう。とにかく我々はそのまままた列車に乗り続けた。帰りの車中でも先ほどと同じおばさんが検札にきたが、そしらぬ顔で先ほどと同じ乗車券を見せたら、行きと同様パンチを打ってそれきり何も言われなかった。きっと同じような人が過去にも現在にもたくさんいたに違いない。復路の途中、カアナパリ駅で燃料を補給したがそれ以外は往路同様、非常にのんびりしたものだ。かくして本日のメインイベントさとうきび列車はラハイナ駅に戻ってきた。

 約一時間ほどの長旅ではあったが、まあこんなもんだなという思いと、別に無理して乗らなくてもいいんじゃないか〜?というのが率直な感想だ。私たちのようにある意味時間を持て余してる人にはいいかもしれない。多くを期待しない人にはそれなりに面白いかも知れないとは思う。ちなみにこの列車では週に一回ディナートレインというイベントもあるようだ。ただこれももしその気があるのなら、くれぐれもスケジュールを確認したほうがいいと思う。

 時間が止まったような遅い列車に揺られ、ある意味優雅な気持ちにはなれたが、反面スピード的にはだいぶストレスが溜まってしまった。マウイ最後の予定も終わったので、あとはもうホテルに帰ってこれまたのんびりとプールサイドに横たわるだけのつもりではあったが、せっかくなので今まで行ってないほうにも車を走らせて見ようということになった。何度も往来している先ほどのさとうきび列車と平行する幹線道路をホテル方向へ車を走らせ、さらにその先まで行ってみようと考えた。

 さとうきび列車はその幹線道路(ホイアピイラニ・ハイウェイ)とほぼ平行に走っていたから、車を使って走るとどれくらいだったのかわかりやすかったが、時間にしたらほんの5分くらいの距離だった。車の速さよりもむしろその程度の距離を25分もかけて走っていることに恐れ入った。ホテルのあるカアナパリを過ぎるとまたこれといって何も無い道が続くのだが、その分車も飛ばしている。
 
 ただカアナパリを過ぎればその先はほとんど何も無いだろうと思っていたが、そのわりには車の台数が多いのに驚いた。つまるところ自分たちの滞在しているホテル近辺が一番の繁華街だと思うのは、観光客のエゴというものなのだろう。

 ただ実際にある程度走ったが、本当にこれといった見所が無くて、なお且つ海からも少し離れていたので、スピードはかなり出せたもののドライブとしてはあまり面白みが無かった。カパルアというホテルも何軒かある町もあったのだが、こちらも特にそれ程面白いものがあるわけではなかった。あまりにも淋しいドライブなのである程度行ったところで引き返した。そして海も見えなかったので帰り道はカパルア・ゴルフ・クラブというゴルフ場を抜けて、幹線より一本海よりの道を走ったのだが、それでも海を見ながら走るということは殆ど出来なくて、なぜか住宅街に入ってしまったような感じだった。

 結局、これといった収穫も無いままにつまらない道をホテルまで帰ってきたのだが、まあこれも一つの経験だったかも知れない。とりあえずは無事にホテルに戻ってこれて何よりだった。



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