はじめてのマウイ(その19)

滞在時間はそれほど長くない。山の頂上なので四方を見渡せるが、景色的にはどちらを見ても似たような感じなので、一通り見渡せば十分堪能できる。でも普段目にすることが出来ないであろう景色であることは確かなので、時間があれば是非行ってみて欲しいところではある。帰りに来る途中見落としたレレイウィ展望台によってまた記念写真を撮る。火星の表面がより良く見える場所だ。デジタルカメラを自分たちに向けて写真を撮っていたら、アメリカ人らしき人が撮ってやると身振りで言ってくれたので(というか実際に何か喋っていたのだが聞き取れずその身振りで判断したのだが)気持ちよくお願いした。
しかし事務的な用事を足すのに比べこういうときにコミュニケーションがとれないのは非常に残念だ。結局サンキューくらいしか言えないのは、むしろ申し訳なさみたいなものも残るし、反対にせっかく滅多にない機会なのに仲良くなることも出来ないから。もっともおじさんだったのでどうしても仲良くならないといけない理由もなかったのだが。さて、山のスケールは十分堪能できたのであとはまた来た道を引き返すのみだ。途中また公園管理事務所でトイレを借りた。このときはちょっと混んでいて細君のトイレが長引いていたので隣の車の外人さん家族のワゴンを眺めていたら、中で小さな子供たちが喧嘩をしていた。ときどき運転手のお父さんが頭を蹴られていたが非常に愛らしい感じだ。

やがて細君が戻ってきたので天気のいい中をまたひたすら車を飛ばして下りて行った。下りなのですこぶる快調だ。エンジンブレーキを併用しながら下りて行くが、非常に走りやすいために逆にスピードの出しすぎには注意が必要だ。それでも日本の山道に比べたらかなり楽なので、ドライブ好きな人は多少運転に自信が無くてもお薦めのコースである。
山の麓近くまで下りて来ると1時を過ぎていてもうお昼には結構いい時間だ。ハレアカラに行く道の途中にたいていの人が寄ると言われる定番のレストランがある。クラ・ロッジというガイドブックにも載っていた店なのだが、帰り道に実はどの辺りを走っているのかわからなくなり、その店を発見できなかった。ただいい加減お腹も空いたので適当な店に入ろうということでこれもまたロッジ風のクラ・サンダル・ウッド・レストランと言うところに入った。テラスで外人さんのグループが何組か歓談しながら食事をしていた。朝食を十分にとっていたのでお昼は軽いものでいいだろうと言うことでハンバーガーとアイスコーヒーの軽い食事だ。細君は相変わらずお腹の調子があまり良くないのでアイスティを頼んでいたがあまりおいしくなくて失敗したと言っていた。

失敗するのは勝手だが、私のアイスコーヒーにまで手を出すんじゃない。まあ私はその辺人間が出来ているのでそれくらいのことで怒ったりはしないのだが。その店も中にいたオーナーらしき女性は日系人みたいな感じだったがウェイターは白人さんだった。お客さんも自分たち以外はみんなあちらの人たち。あちらってどちらなのかよくわからないけれど、異国情緒たっぷりだ。山からの風に吹かれて穏やかな景色を眺めながら食べたハンバーガーはそれなりにおいしかった。車もそれほど通らなかったので食べてるものは所詮ハンバーガーではあったけれど優雅で落ち着いたひとときだった。

食事が終わりあとは帰るだけとなったのだが、ガイドブックを見るとこのクラの町にはワイナリーがあると書いてある。面白そうなので行ってみようかと行きかけたのだが、距離的にどれくらいあるのかよくわからず、またガイドブックをよく見てみると狭くて曲がりくねった道が続くと書いてある。どうしても行かなきゃいけない場所でもなし、実はマウイのあとオアフによるツアーなので下手な買い物して荷物を増やすのも嫌だったので、帰り道と逆方向に走っていたのだが道が怪しくなってきたら面倒になったのでUターンした。
やがて先ほど食事をしたレストランを過ぎるとすぐに、先ほどはわからなかったクラ・ロッジの看板が見えた。『なんだ、もうちょっと走っておけば良かったね』という細君ではあったが、さっき食べた店とそれほどの違いは無いようにも思えた。



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