はじめてのマウイ(その17)

「ん?フォード?。。。。フォードじゃん。。。」一瞬目が点になったが、なんのことはない。つい今の今までカローラだと思っていたその車はフォードだったのだ。別に車を間違えたわけではない。昨日まで無かったマークが突如現れたわけでもない。要は思い込みで気がつかなかっただけである。結局、いかに注意力が散漫だったかと言うことだ。恐らくスーツケースの一件で気が動転して目の前のものすら見えていなかったと言うことだな。車を降りて確認したらなるほどフロントにもリアーにも確かに『Ford』と書いてある。自分の馬鹿さ加減に思わず笑ってしまったが、外車だと気がついたらふとあることに気がついた。日本のガソリンスタンドは今でこそセルフのスタンドも普及してきているが、店員に入れてもらうところがほとんどだ。だからこそ車に乗ったまま給油口が開けるように車内に開閉用のレバーがあるのだろうが、こちらではむしろセルフが当たり前である。ならば当然運転手が車から降りて自分で給油口まで行かなければならないのだからレバーを車内につけてもあまり意味がない。とそこまで考えが至り給油口のカバーを確認するとまさしく思ったとおり、指で開けるようにカバーに凹凸がついている。そこに指をかけて開けばなんのことはない、あっさりと開いた。やれやれ、とんだ時間のロスだ。もともと自分の注意力の無さが招いたものだが、それにしても情けなくてしょうがない。ともあれ、これで心配していたことの一つが解決したのであとは実際にガソリンスタンドに行ってからちゃんと入れられるかだ。細君の冷ややかな目に耐えながらもそれでも心の中ではひと安心だ。アイドリングは十分すぎるほど済ませたので、これまた細君が切れないうちにそそくさとホテルの駐車場をあとにした。

さて、今日は昨日くる時と違い気分的には相当軽いものになっている。車の運転も昨日乗っているのでだいぶ慣れた。右側通行と言うのはさすがに気にはなっていたもののそれでも曲がる時のラインを間違えたりすることはない。ある意味全部の車が右側通行なので(当たり前だが)普通に走っていれば、それほど気になるものではない。幹線道路に出るとあとはもうほとんど車の流れに乗って走るだけだ。
今日の目的地ハレアカラ山はマウイ島の若干東よりになる。滞在しているホテルがあるカアナパリはマウイ島のほぼ一番西になるので距離的にはだいぶある。また富士山級の山ではあるが、遠くの方からその山を目視で確認しながら向かっていくと言う感じではない。だが道路、特に幹線道路が限られているので道に迷うほどのものでもない。空港の少し手前を別の道に入っていく感じだから、言ってみれば昨日の道をそのまま引き返すようなものだ。
しかし今日は昨日と違い右手に海を見ながら快適なドライブになっている。海岸でサーフィンを楽しんでいる人たちなどを眺めながら乗り心地のいい車に揺られ走っていた。それにしても気持ちが楽になっている分、見る景色も素晴らしい、まさに南国のリゾートという感じだ。やはり大切なのは気持ちの問題だなと実感した。

小一時間も走ると空港が近づいてきた。手前を右折する形で山の方の道に入っていかなければならないが当然標識も英語で書かれている。だが日本のように聞いたこともないような地名が書かれている案内標識ではないので、というか迷うほどの地名もないのだろうが間違うことはまずない。ハレアカラあるいはクラを目指していけばいいだけだ。さて、ある程度注意をしなければならないことにスクールバスの停車というのがある。前を走っていたスクールバスが停車した際はその場で停止、反対車線のスクールバスが停車した時もまた停止しなけれがならないという日本では救急車並みの扱いだ。それだけ子供の安全に気を使っているということなのだろう。これは独特なので気にはなっていたが実際に走ってみてそれほど多くは走っていないなと感じた。

空港手前を右に折れてハレアカラ山に向けての道に入ると相当長い直線道路に出る。道幅も広く快適だ。その気になればいくらでもスピードが出せそうだし、実際に地元の人間らしき人たちはかなりのスピードで飛ばしている。こちらもそれなりに流れに乗って走っていたがスピード違反でつかまりたくないので適度に押さえながら走っていた。日本では制限速度を遵守すればたちまち渋滞になるだろうがこの辺りではそれほど交通量も多くなくしかも片側2車線の広い道なので特に気にする必要も無い。さて、そうこうするうちに山への道に入っていった。クラハイウェイを左折してハレアカラ・ハイウェイの方へ入っていく。山ろくの辺りから道は片側一車線になっているので、曲がる場所さえ間違えなければあとは道なりにまっすぐ走るだけだ。



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