はじめてのマウイ(その13)

無事にトランクケースが戻ってきたことで、それまでもやっていた心の中がすっきりと晴れた。実は貴重品関係は二人とも全てリュックに背負っていたので、特に無くなって困るものと言えば、着替えの服くらいのものなのだが、下着から山用の防寒着まで全て入っていたわけだから、無いということになればスケジュール的にも大きく影響する。それまで日本から着ていったポロシャツとジーンズで多少窮屈な思いをしていたので、さっそくTシャツと短パンに履き替えたのだが、安心感と開放感で余計に睡魔が襲ってきた。私がいったん寝るとなかなか起きないのを知っている細君は、盛んに寝たら駄目と繰り返していたが、先ほどのうたた寝ではとても睡眠不足を補えるわけもなく、ちょっとだけと言いながらまたベッドに潜り込んだ。そして知らぬ間にまた眠りに落ちていた。

今日の晩御飯どうするの?という細君の怒ったような声で目が覚めた時、時刻はすでに夜の10時近くになっていた。またやってしまったかという思いで、なんとか起き上がったが、それでも頭はボーッとしている。実は初めてハワイを訪れた時も同じように寝てしまい、そのときはオアフだったのだが、わりとワイキキのはずれの方のホテルだったために、その日の晩御飯はABCストアで買ったそばとおにぎりという淋しい夕食で済ませてしまったのだが、その時の記憶が蘇った。
マウイはバカンスとしてはとてものんびりできるところではあるが、こと食事に関してはオアフと違って食べられるところが限られている。それでも滞在したホテルの近くにホエラーズビレッジがあったためまだ救われているのだが、そうは言っても観光地だけに閉店も早い。

とりあえず何か食べに行かないといけないなということで、部屋を出てレストランを探しに行くことにした。ホテルの一階にはいくつかのレストランが入っているのだが、そのうちの一つはツアー料金に含まれている朝のバイキングを食べるところなので、夜まで入る必要は無いだろうということで、今度はホテルのプールの脇を通って海岸沿いをホエラーズビレッジの方まで歩いてみることにした。さて、ここでひとつ問題となるのが、食事の料金だ。マウイはオアフに比べ全体的に物価が高いように思う。いや、物価が高いのではなくてオアフのように安い店が少ないと言ったほうがいいのかもしれない。多くのレストランはオープンテラス風で入り口にはメニューが掲げられているが、これまた全部英語で書かれてある。多少日本語の説明が入ったものもあったが、いったい何料理なんだかよくわからなかったりする。しかも殆どラストオーダーの時間が近いというのに、並んで待っている人が結構いる。結局、需要と供給のバランスから言えば、殆どお店のほうに分があるわけだ。特に人気店に関しては、予約を入れないと入れないという店もあり、その店では外にたくさんの人が並んでいる。正直私も細君も並んでまで食事すると言うのが嫌いな性分で、それとカミサンの腹の具合もあったので、とりあえず昼間食べに言ったマックの方まで行ってみようということになった。

さて、このマックのある場所なんだが、ガイドブックによるとその隣に蕎麦屋が入っている。実は私はそば好きで、別に海外に行ったら現地のおいしいものを食べなきゃいけないなどという考えは持ち合わせていないので、そばを食べたいななどと思っていた。しかし、これは蕎麦屋といっても、独自に店の中にテーブルがあってという構造ではなくて、ピザ屋やマックと同じスペースの中で食べる、スーパーやデパートによくあるいわば食券を買って、適当なところに座って食べるといういわゆるファーストフード店的なものである。しかしいくら探してもそれらしき蕎麦屋が見当たらない。そのときはガイドブックを部屋に置いてきてしまったので、ひょっとしたら記憶違いかなとも思ったのだが、もしかするとシャッターの閉まっているところがあったので、今日は既に閉店したのかな?とも思っていた。実は昼にハンバーガーを食べた時も蕎麦屋が無いことに多少疑問はあったのだが。。。さて、私は同じものをつづけて食べても特になんとも思わない人間で特にラーメンなどは1日2食くらいは平気である。ところが細君はその辺はいたって高級なつくりになっているらしく、同じものをつづけて食べるのは嫌だという人間だ。よってマックという選択肢はなくなったわけだが、実はこの時間はすでに終わっていたらしく、中の明かりはついていたものの、入り口には鍵がかかっている。店の外のテーブルで食べていた人たちは、相当前に、注文を済ませていたということか。